目標を持って頑張っている人を見るたびに、自分は何がしたいのかわからないという焦りが来る。やりたいことを探しているのに、何も出てこない。目標を見つけなければという義務感だけが膨らんで、余計に動けなくなる。
目標が見つからないのは、やる気がないからでも、向上心がないからでもない。目標の探し方が自分に合っていないか、そもそも目標というものを大きく捉えすぎていることが原因になっていることが多い。
この記事では、目標が見つからない理由と、自分に合った目標を見つけるための具体的なヒントを整理する。壮大な夢を持たなくても、目標は見つけられる。
なぜ目標が見つからないのか
目標を大きく捉えすぎている
目標と聞くと、人生を変えるような大きな夢や、明確なビジョンを持たなければならないというイメージが先に来る。起業したい、世界に出たい、社会を変えたい、というレベルでなければ目標ではないという思い込みだ。
この思い込みがあると、日常の中にある小さな方向性が目標として見えない。もっと丁寧な仕事をしたい、今より料理が上手くなりたい、毎朝気持ちよく起きられるようにしたい、こうしたことも立派な目標だ。目標のサイズを下げることが、見つける最初の一歩になることがある。
やりたいことを探そうとしている
やりたいことを探すという発想が、目標を見つけにくくしていることがある。やりたいことは、探している間には見つからず、何かをやっている最中に気づくことの方が多い。
待っていれば天啓のように降ってくるものではなく、行動の中から輪郭が浮かんでくる。やりたいことが見つかってから動くのではなく、動きながら見つけていくという順番の方が、実態に近い。
過去の経験から自分の可能性を狭めている
以前に何かに挑戦して失敗した経験、向いていないと言われた経験、続かなかった経験が積み重なると、どうせ自分には無理という前提ができる。この前提があると、目標の候補が浮かんでも、自分には関係ないとして除外する。
目標が見つからないのではなく、候補が来るたびに否定しているということが起きている場合がある。
比較の中で自分を見ている
他者の目標や成功を見て、自分の方向性と比べることで、自分のやりたいことが小さく思えてしまう。あの人はこんな目標を持って動いているのに、自分はこんなことしか思い浮かばない、という処理が、候補を消していく。
目標は比較するものではなく、自分の今の状態から出発するものだ。他者の目標が自分の目標の基準になっている間は、自分に合ったものは見つかりにくい。
目標の種類を知る
結果目標とプロセス目標
目標には、達成したい結果に向けるものと、取り組み方に向けるものがある。
結果目標は、資格を取る、収入を上げる、体重を落とす、という形だ。達成したかどうかが明確で、動機として機能しやすいが、達成後に空虚感が来やすい。
プロセス目標は、毎日30分本を読む、週3回運動する、相手の話を最後まで聞く、という形だ。結果より習慣や行動の質に焦点を当てる。達成の実感は薄いが、継続しやすく、積み重ねが自信になる。
目標が見つからないと感じている人は、結果目標ばかりを探していることが多い。プロセスに目を向けると、今日から動けるものが見えやすくなる。
短期・中期・長期の区分
全部を長期目標として考えると、遠すぎて実感が湧きにくい。今週できること、今月できること、今年達成したいこと、3年後に向かいたい方向、とスケールを分けると、それぞれに合った目標が見えやすくなる。
長期目標が見えない時でも、今週の目標は作れる。小さな積み重ねが、後から振り返ると方向性になっていることがある。
目標を見つけるための7つのヒント
不満から逆算する
今の状況で不満に感じていることの裏側に、目標の候補がある。会議で自分の意見が伝わらないという不満があるなら、伝える力を上げたいという方向がある。体がだるいという不満があるなら、体調を整えることが目標になる。
不満はエネルギーを持っている。何かを変えたいという気持ちの出発点として、不満は目標の良い原料になる。
不満を書き出して、それぞれの裏にある、こうなりたいという方向を一言で書いてみる。不満の数だけ、目標の候補が出てくる。
羨ましいと感じた瞬間を集める
誰かを羨ましいと感じた時、その感情は自分が向かいたい方向を指していることが多い。あの人みたいに話せたらいいな、あの人みたいな仕事をしてみたいな、という感覚の中に、自分の方向性の種がある。
羨ましいという感情を、見苦しいものとして処理せずに、情報として使う。どんな場面で、誰に、何を羨ましいと感じたかを記録すると、繰り返し出てくるテーマが見えてくる。
時間を忘れた経験を振り返る
子どもの頃から今まで、時間を忘れるほど没頭した経験を書き出す。ゲーム、工作、人との会話、読書、スポーツ、何でもいい。内容より、没頭できたという事実の方が重要だ。
没頭できるということは、そこにエネルギーが向きやすい領域があるということだ。そのエネルギーの向きが、目標の方向性と重なることが多い。今すぐその経験を再現できなくても、その経験の何が没頭させたのかを分析すると、今の生活に応用できる方向が見えてくる。
死ぬまでにやりたいことを制限なく書く
実現可能かどうかを考えずに、死ぬまでにやりたいことを思いつく限り書き出す。どんなに非現実的でも構わない。書きながら出てくる感情、これは本当にやりたい、これはそうでもないという感覚を確認する。
全部やる必要はなく、書き出した中で感情的な重みが大きいものが、今の自分にとって向かいたい方向を示している。
過去に誇りを感じた経験を探す
これまでの経験の中で、小さくてもいいので誇りや手応えを感じた場面を思い出す。誰かから感謝された、自分で問題を解決できた、何かをやり遂げた、人に教えることができた。
その場面に共通するものが、自分の強みや持ち味につながっており、目標の方向を示していることが多い。誇りを感じた経験は、自分がエネルギーを発揮しやすい領域の手がかりだ。
一週間だけ試してみる
目標の候補が浮かんだら、一週間だけ試してみるという選択肢を持つ。向いているかどうか、続けたいかどうかは、やってみて初めてわかる。
一週間という期限を設けることで、続けることへのプレッシャーなしに試せる。一週間後に続けたいと思えるかどうかが、その目標の方向性を確認する材料になる。
今日の終わりに小さな確認をする
毎日寝る前に、今日何に時間を使いたかったか、今日何が一番充実していたかを短く確認する。この積み重ねが、自分がどこに向かいたいかのデータになる。
一日一日は小さいが、30日分積み重ねると、繰り返し出てくるテーマが見えてくる。そのテーマが、今の自分の目標の方向に近い。
実例でわかる目標の見つけ方
30代で方向を見失っていたケース
35歳の会社員、橘さんは、20代に立てた目標を達成した後、次が見えない状態が2年続いていた。仕事はこなせていたが、何のためにやっているかわからないという感覚だった。
橘さんがやったのは、一週間の不満リストを作ることだった。毎日感じた不満を短く書くと、会議での発言が通らない、自分が考えたことが形にならない、という内容が繰り返された。
この不満から逆算すると、自分のアイデアを形にできる役割を持ちたいという方向が見えた。転職や独立という大きな変化ではなく、まず社内でアイデアを提案できる機会を探すという小さな目標を作った。
半年後、社内の改善提案制度に応募して採用され、小さなプロジェクトを担当することになった。目標は大きくなかったが、仕事への手応えが変わった。
20代で何もやりたいことがなかったケース
24歳の会社員、山本さんは、就職してから今まで、特にやりたいことがないまま過ごしていた。周囲が資格取得やスキルアップに励んでいるのを見て焦りはあったが、何に向かえばいいかわからなかった。
山本さんがやったのは、羨ましいと感じた瞬間のメモだ。3ヶ月間、羨ましいと感じるたびに短く記録した。
3ヶ月後に見返すと、人前で話すことへの羨ましさが繰り返し出ていた。プレゼンが上手い同僚、司会進行が自然な先輩、話し方の上手な登壇者。山本さん自身は人前で話すことが苦手だったが、それへの羨ましさが一貫していた。
苦手だから無理と思っていたが、羨ましさが強いということは向かいたい方向だと解釈した。話し方の練習ができる社内サークルに入ったことが、初めて能動的に選んだ目標になった。
40代で新しい目標を探していたケース
44歳の田中さんは、子育てが一段落した後に、自分のための目標を持ったことがないと気づいた。
死ぬまでにやりたいことを制限なく書き出す作業をした時、出てきたものの多くが、誰かのために、という内容だった。子どものために、家族のために、職場の人のために。自分のためという発想が薄かった。
それでも書き続けると、若い頃に好きだった陶芸を再びやりたいという一行が出てきた。書いた瞬間に、これは本当にやりたいと感じた。他の項目と感情の重みが違った。
一週間だけ体験教室に行ってみる、という小さな一手から始めた。今は週一回の教室が、自分のための時間として定着している。壮大な目標ではないが、毎週楽しみに起きられる日が一日増えた。
目標を作る時に意識したいこと
他者のために作らない
他者を喜ばせるための目標、他者に評価されるための目標は、他者の反応が変わった時にモチベーションが崩れやすい。目標の動機が自分の内側にある方が、継続しやすく、達成した時の充実感も深い。
周囲にどう見えるかより、自分がどう感じるかを先に確認する。
完璧な目標を待たない
完璧な目標が見つかってから動こうとすると、動けないまま時間が過ぎる。今の自分に見えている最善の方向で動き始める。動きながら方向は修正できる。
目標は最初から完成していなくていい。仮の方向として動き始めて、経験の中で精度を上げていく方が、多くの場合うまくいく。
数字より感覚を先に置く
毎月10万円稼ぐという数字の目標より、仕事で充実感を感じたいという感覚の目標の方が、方向として長く機能することがある。数字は達成後に消えるが、感覚は更新され続ける。
どういう状態でいたいか、どんな感覚を持って生活したいか、という問いから目標を作ると、日常との接点が生まれやすい。
目標を一つに絞らない
一つの大きな目標だけを持つ必要はない。仕事でのこと、健康のこと、関係のこと、学びのこと、それぞれに小さな方向性を持つ方が、どれかが停滞しても他で手応えを感じられる。
複数の方向があると、生活全体の充実感が維持されやすい。一つの目標に全部を賭けると、それが揺らいだ時のダメージが大きくなる。
目標は、探して見つけるものというより、動きながら気づくものだ。今日の不満、今週の羨ましさ、今月の手応え、その積み重ねが、気づけば方向性になっている。
壮大な夢がなくても、今日より少しいい状態を目指すことが、目標の最もシンプルな形だ。その一歩が積み重なることで、後から振り返ると道ができている。
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