何か新しいことを始めようとしている。転職、副業、資格取得、引越し、新しいスキルの習得。方向は決まっているのに、なぜか最初の一歩が重い。あるいは、まだ何をするか決まっていないが、今のままではいけないという感覚だけがある。
新しい挑戦を前にした時の感覚は、人によって違う。高揚感と不安が同時にある人、不安だけが先行している人、何から始めればいいかわからない人。どの状態であっても、挑戦を前に進めるための考え方は共通している部分がある。
この記事では、新しい挑戦を始める時に知っておくべきこと、踏み出す前に整理すべきこと、そして挑戦を続けるための思考と行動を整理する。
新しい挑戦とはどういう行為か
挑戦の本質
挑戦とは、今の自分の範囲を超えようとする行為だ。今できることを繰り返すことは挑戦ではなく、今できないこと、不確実なことに向かうことが挑戦になる。
この定義で見ると、挑戦には必ず不確実性が伴う。うまくいくかどうかわからない、続けられるかどうかわからない、向いているかどうかわからない。この不確実性を受け入れることができるかどうかが、挑戦を始められるかどうかの最初の関門になる。
挑戦しないことのコスト
新しい挑戦を考える時、失敗した場合のコストだけを検討することが多い。しかし挑戦しないことにもコストがある。成長が止まる、可能性が狭まる、後悔が積み重なる、現状が固定化していく。
挑戦するリスクと、挑戦しないリスクを並べて考えることで、判断の材料が均等になる。多くの場合、挑戦しないことへの後悔の方が、挑戦して失敗した後悔より大きくなりやすい。
新しい挑戦を前にして起きること
抵抗感の正体
新しいことを始めようとすると、理由もなく億劫な感覚が来ることがある。やろうと思っているのに体が動かない、準備はしているのに一歩が踏み出せない。
この抵抗感は、脳が未知の状態をリスクとして処理することから来ている。慣れ親しんだ状態を安全と判断し、そこから外れることへの警戒反応だ。抵抗感があること自体は、失敗の予兆ではなく、脳の正常な働きだ。
この抵抗感を、やめるべきサインとして受け取ると、挑戦は始まらない。抵抗感があっても動く、という選択が挑戦の出発点になる。
周囲の反応への不安
新しい挑戦を人に話すと、懐疑的な反応が来ることがある。今の仕事を辞めるの、そんなことして大丈夫、向いているの、という言葉は、相手の心配から来ていることが多い。ただその言葉が、挑戦への動きを止めることがある。
周囲の反応は、挑戦が正しいかどうかの判断基準にはならない。周囲の見えている情報は限られていて、自分の内側の感覚や情報量とは違う。参考にすることはできるが、判断を委ねることではない。
完璧な準備を待つ罠
準備が整ってから始めようとすると、始まらないまま時間が過ぎることがある。完璧な条件が揃う瞬間は来ない。情報は常に不完全で、タイミングは常に完璧でない。
準備8割で動き始め、残り2割は動きながら補う、という発想が、多くの挑戦で機能する。動き始めてから見えてくる情報が、準備段階では手に入らない種類の情報だからだ。
挑戦が続かない理由
結果を急ぎすぎる
新しいことを始めた初期は、成果が出にくい時期が必ずある。この時期を、向いていない、失敗だという証拠として処理すると、続かなくなる。
どんな挑戦にも習熟曲線がある。最初は成長が遅く、ある時点から加速する。最初の遅い成長の時期を、辛抱できるかどうかが、挑戦が続くかどうかを大きく左右する。
目的が曖昧なまま動いている
何のために挑戦するのかが自分の中で明確でないと、困難な場面での踏ん張りがきかない。楽しそうだから、流行っているから、誰かに勧められたから、という動機は弱い。
自分がどうなりたいか、何を変えたいか、という内側の動機が明確なほど、挑戦の持続力は高くなる。
一人で抱えすぎる
新しい挑戦を全部一人でやろうとすると、つまずいた時の修正が遅くなる。経験者のアドバイス、同じ挑戦をしている人との交流、サポートしてくれる環境が、挑戦の継続を助ける。
一人でやり遂げることへのこだわりが、助けを求めることを妨げる場合がある。挑戦における孤立は、継続の妨げになりやすい。
完璧主義が足を引っ張る
最初からうまくやろうとすることで、失敗を恐れて動きが遅くなる。新しい挑戦の初期段階で完璧を求めると、完璧でない状態への自己批判が続き、消耗が早くなる。
最初は下手でいい、失敗から学ぶという姿勢が、挑戦の初期段階では特に重要になる。
実例でわかる新しい挑戦のリアル
30代でキャリアを変えたケース
34歳の会社員、坂本さんは、10年働いた業界を離れてWebデザインを学ぶことにした。周囲からは今更遅いという反応が多く、自分でも向いているかどうかわからない状態で始めた。
最初の3ヶ月は、課題を完成させるたびに出来の悪さが気になった。同じコースの若い受講者の進み方と比べて、自分の遅さを問題視していた。
変化が来たのは、コーチから比べる相手が間違っていると言われた時だった。3ヶ月前の自分と今の自分を比べた時に、できることが増えていることに気づいた。他者との比較ではなく、過去の自分との比較に切り替えてから、消耗感が減った。
1年後、坂本さんは副業としてデザインの仕事を受け始めた。遅いと言われていた挑戦が、形になった。
40代で副業を始めたケース
42歳の田中さんは、会社員を続けながら副業でライターの仕事を始めた。最初の案件の単価は低く、時間をかけた割に収入はほとんどなかった。
続けるべきか迷った時期に、田中さんが意識したのは収入より積み上がっているものを確認することだった。書いた本数、書くことへの慣れ、フィードバックから学んだこと。収入は小さかったが、積み上がっているものは確かにあった。
この確認が、続ける理由になった。6ヶ月後には単価が上がり始め、1年後には会社員の収入と並ぶ水準の月が出てきた。最初の半年の低収入の時期を、失敗ではなく積み上げの時期として処理できたことが、続けた理由だった。
50代で新しいコミュニティに入ったケース
52歳の木村さんは、定年後を見据えて地域活動への参加を始めた。仕事以外の人間関係をほとんど持っていなかったため、最初の参加は強い緊張を伴った。
初回は会話がうまくできず、帰り道に次は行かないでおこうと思った。しかし2回目も参加した。行くと決めた理由は、一度行かなかったら次が永遠に来ない気がした、という単純な判断だった。
3回目の参加から、少し慣れた感覚が生まれた。半年後には、自分が案内する側になっていた。最初の緊張の強さと、半年後の状態の差が、木村さん自身に驚きだった。
新しい挑戦を始め、続けるための具体的な行動
挑戦の動機を一文で書く
何のためにこの挑戦をするのかを、一文で書いておく。困難な場面で判断が揺らいだ時に、この一文が立ち返る場所になる。
動機が曖昧なまま始めると、困難が来た時の軸がない。始める前に動機を言語化することが、挑戦の持続力を作る。
最初の行動を5分でできるサイズにする
挑戦の最初の一手を、5分で終わる大きさに設定する。検索する、資料を請求する、一通メールを送る、一つの教材を開く。この5分の行動が情報を生み、次の判断の材料になる。
最初の行動のサイズが小さいほど、始めるためのエネルギーが少なくて済む。始まってしまえば、次は自然に続きやすい。
3ヶ月だけ続ける約束をする
永遠に続けるという約束は重い。3ヶ月だけ続けてみて、その後判断する、という期限を設けることで、始めるハードルと続けるハードルを同時に下げる。
3ヶ月続けてみると、向いているかどうかの実感が生まれる。やめる判断も、続ける判断も、3ヶ月後に現実的な情報を持ってすることができる。
一週間に一度、小さな進歩を確認する
週末などに、今週何ができるようになったか、何を学んだか、何をやってみたかを短く確認する。この確認が、成長の実感を作る。
成長は連続的には感じられにくく、振り返った時に初めて見える。週次の確認が、見えにくい成長を可視化する。
同じ挑戦をしている人と繋がる
同じ方向に動いている人との繋がりが、挑戦の継続を助ける。困難な場面での共感、先を行く人からの見通し、一緒に動いている仲間の存在。
コミュニティ、勉強会、SNSのグループ、どんな形でも、一人より複数の人と共有している状況の方が続きやすい。
失敗を記録に残す
うまくいかなかったことを、次にどう変えるかとセットで記録する。失敗を感情的なダメージとして処理するのではなく、情報として扱う習慣が、挑戦の学習速度を上げる。
失敗の記録が積み重なると、自分がどこで躓きやすいかのパターンが見えてくる。パターンがわかると、対処が早くなる。
挑戦をやめる基準を先に決めておく
続けることへの執着が、状況に合わなくなった後も動き続けさせることがある。やめる基準を先に決めておくことで、続けることへの固執と、適切な判断の区別がつきやすくなる。
3ヶ月続けて収入がゼロなら方向を変える、半年試して全く楽しめなかったら別の選択を探す、という基準を持っておくことで、挑戦への関わり方が柔軟になる。
挑戦のサイズを自分に合わせる
大きくなくていい
新しい挑戦は、人生を変えるような大きなものでなくてもいい。今まで読まなかった種類の本を読む、今まで行かなかった場所に行く、今まで話さなかった人に声をかける。日常の中の小さな越境が挑戦だ。
大きな挑戦ばかりを想定していると、日常の中にある小さな挑戦の機会が見えなくなる。小さな挑戦の積み重ねが、大きな変化の土台になる。
今の自分の延長から始める
全く新しい何かを始めようとするより、今持っているものの延長から挑戦を始めると、ゼロからではないため入りやすい。
今の仕事で身についたスキルを、別の文脈で使う。今の趣味を、人に教える形に変える。今の人間関係を、別の目的に活かす。今持っているものが、挑戦の出発点になる。
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